アーベインビオ川崎は、JR川崎駅西口に位置する再開発地区の一角に都市公団が進めている建替事業の団地である。造園設計に対しては、快適な環境と新しい都市風景を創出し、都心再生事業に求められている環境に配慮した新しい緑化のあり方を人工地盤及び住棟屋上などの建築空間に実現することが求められた。
これに応えるため「人のためのランドスケープ」と「生き物のための環境」とが調和融合した緑の環境を「都市の森」と呼び、これをコンセプトとした人工地盤上の造園設計を進めた。
緑化計画の段階では、都心では見ることの少なくなった市域に生息する野鳥や昆虫を可能な限り誘致するよう、川崎の植生及びその構成種を基本モデルとして植栽計画を立て、旧団地の樹木や地被草本を移植活用して建替前の風景を継承しつつ、居住者が緑に親しみ、楽しめる緑の風景をつくり出すため、川崎の「農家の庭先」をモチーフとして造園空間のデザインを進めた。また、環境共生に配慮して、雨水を利用した鳥や昆虫のための省電力型水盤や旧団地土壌及び草本をマット状に仕立てた「エコパッチ」の施工など、様々なエンジニアリングの試みを行っている。
このような人工地盤における環境に配慮した緑化デザインと新しい技術の取り組みの効果と成果を検証し造園空間の管理に反映させるため、平成13年11月からモニタリング調査を行ってる。無灌水の状態で移植、新植樹木ともに良好な生育をとげ、植栽基盤土中の種子が発芽し多様な植物が季節毎の風景を演出し、アオスジアゲハ、ミヤマアカネなどの昆虫、シジュウカラ、メジロなどの鳥類の飛来、生息を確認している。今後は団地居住者への説明会を継続し、居住者の理解・協力のもと育ちつつある環境を維持・育成していくことが課題である。 |