南日吉団地は都市機構が管理する、昭和37年に建設された賃貸集合住宅で、平成12年から建替工事に着手している。
本計画では、『アメニティの高い都市環境と質の高い都市デザインによる持続可能な地域社会づくり』がテーマになっている。
さらに本街区では、地域防災拠点に指定されている日吉南小学校への避難路となる北側沿道部が『防災オアシス』として位置づけられており、「安心して生活できる防災性、安全性の高い都市基盤の整備」が求められた。
これまでの建替え事業では「日吉」地区が持つ東横沿線の山の手のイメージから、「都市性、開放性、爽やか」をキーワードに団地づくりが行われている。これを受けて、本街区では既存樹木を活用した高木と低木・地被によって構成された開放的で爽やかな植栽空間とシンプルで洗練されたデザインの屋外施設の組み合わせによりレストスペースや遊び空間を整備し、全体の調和を図っている。
防災オアシスも『災害時の救急・救命のオアシス』であると同時に、『質の高い緑や施設によって、日常でも都市のオアシス』となる空間整備が求められることから、団地全体のテーマやデザインをベースに、その中に防災機能を組み込むこととした。
防災オアシスは団地全体の骨格となる広幅員の空間であり、シンボルとなる空間でもある。ここでは大樹となる高木と芝生の園地を組み合わせたみどりの空間の中にシルバーメタルの自転車置場やベンチをアクセントとして配し、印象的な街路景観とした。 広幅員の街路空間は、災害時の避難路、一次避難場所として有効であり、大樹は落下物から避難者を守ると同時に延焼を防ぐ役割を果たす。
自転車置場内には簡易トイレが組み込まれているほか、ベンチはカマドとして利用が可能である。防災オアシスの中心部には団地名板を兼ねた雨水利用の手回しポンプが設置されているほか、送電復旧までの間利用できるソーラー式照明灯が設置されている。 |