生田緑地は川崎市西部丘陵地に位置し、市街地では消失してしまった大規模な丘陵樹林を持った都市公園である。
設計対象の「ホタルの里」は、公園区域北端の谷戸に残る休耕田エリアにあり、「生物生息環境の保全と生物相の多様化、および自然環境教育の場の提供」を目的として整備が計画された区域である。
設計では、休耕田に広がる草本群落とホタルの生息に欠かせない小川など、生物生息環境の保全のため、来園者の無秩序な利用を制限する木道整備を行った。谷戸の奥から続く自然観察・散策のための木道は、地盤、植生など現況の環境への影響を最小限にとどめるため、ピンファンデーションといわれる鋼管杭基礎の工法を採用した。
また、谷戸林縁部の水路の水を利用して多自然型工法による水路と池をつくり、トンボや水辺動物などの生息環境を整えた。その際発生した伐採樹木はカントリーヘッジの材料とするなど、生物相の多様化に一役買っている。
市民の自然に対する関心の高まりに伴い、利用のしかたも利用者も多様化している。そのため木道は谷戸の動・植物が観察できるルートを設定し、環境学習の助けになるよう要所に自然解説板を設置した。また、高齢者や身障者も利用できるよう、車イスでも通行可能な幅員と縦断勾配としたり、手すりも手にやさしい丸棒タイプとした。 |